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春の褒章 栃木県からは11人が受章

さまざまな分野で功績があった人を国が称える春の褒章の受章者が発表され、県内からは11人が受章しました。

全国で春の褒章を受章するのは、607人と22の団体です。このうち県内からは、その道一筋に励んだ人に贈られる黄綬褒章に2人が、公共の仕事で顕著な功績があった人に贈られる藍綬褒章には9人が選ばれました。

黄綬褒章を受章した、芳賀町のナシ農家田口敏郎さん(72)です。ハウス栽培で作っている「幸水」の実が大きく育つよう、1つの枝にたくさんなっている実を取る作業をしています。

田口さんは、両親が始めたナシの栽培に20歳から携わり、今年で52年。半世紀以上の人生をナシに捧げてきました。

地域農業の優れた担い手として認められた田口さんは、「農業士」として次世代の育成や指導にも取り組んでいます。田口さんの元へはその技術や知識を学ぼうと、農業に関心のある若者や農業振興に関わる自治体職員などが訪れ、その数はこれまでに100人にも上っています。

また、田口さんの暮らす芳賀町稲毛田という地域はナシの生産がとても盛んで、その地域性を活かしながら農地整備を進めようと、田口さんは県と地域の間に入りまとめ役も担ってきました。高齢化などで活用されなくなった農地を集約し、生産規模を拡げたい農家に土地が貸し出せるよう、地権者へ説明を行い、ナシ畑の集まる団地として活用できるようになりました。

受章を受けて、田口さんは。

「まさかこんなすばらしい章をいただけるとは思っていなかった。梨部会として町からも支援してきてもらったので、いくらか恩返しができたかな」

技術が今のように確立されていなかった頃はすべて手作業だったため、ハサミの使い過ぎで腱鞘炎になることもありました。

「作業としては一年中あるが、大変だと思ったことはなかった。うまいナシを作ろうという思いが強かったから」

田口さんを陰で支えてきたのは、嫁いで45年になる妻の幸代さん。以来、ずっと夫婦でナシを育ててきましたが、6年前に病気を患うと幸代さんの大切さを改めて感じたという田口さん。そんな田口さんを助けようと手伝いに来て励ましてくれたのが若かりし頃から切磋琢磨した同じナシ農家の仲間たちでした。

「仲間がいたからなんとかやってこられた。ひとりではできなかったと思う」

そう感謝の言葉を述べました。

今では、息子夫婦らも一緒にナシづくりに励んでいます。

近年田口さんの頭を悩ませるのは、夏の猛暑。高温障害でナシの表面を日焼けなどから守る方法を懸命に考えているといいます。

そして、地域農業を担う若者たちに「どうぜやるなら夢と希望を持って産地を盛り上げてもらいたい」と期待を寄せています。

「こういった受章を励みに頑張ってくれる若い後継者が出てきたらありがたい。自分で信念を持ってやれば、苦労も苦労と思わなくなるから。ナシづくりが好きじゃないと、なかなかうまくいかないよね。私も今72歳ですけど、80歳までは頑張らなくちゃいけないなと思っています」

ナシへの情熱はまだまだ途切れることはありません。目指せ、ナシ栽培60年。田口敏郎さんのナシづくりはまだまだ続きます。
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