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山林火災で破損した仁王像 山門に帰還 足利市

報道特集です。

今回は、空気が乾燥し寒くなってくると発生しやすくなる火災がテーマです。中でも山林火災は規模が大きくなって影響が深刻になります。

足利市の山林火災は2021年2月21日に両崖山で発生しました。山林火災といっても燃えたのは市街地のすぐそば。当時、市内の200世帯以上に避難勧告が出されました。
鎮火したのは火災発生から23日後の3月15日でした。

炎が近づいたのは一般住宅だけではありません。仏像などの文化財が保存されている山の上にある寺も危機にさらされていました。

当時、炎が近づいていたのは大岩山最勝寺です。火災発生から2日後、2月23日の夜のことでした。

「迫りくる炎で大切な文化財を燃やしてしまってはいけない」…近隣の人たちが集まり毛布などに包んで運び出していきました。

多くの人の善意で文化財は運び出されましたが、鎮火が発表されてからも事態はそう簡単ではありませんでした。

火の手が迫る中、急いで運び出したため、損傷が多く修復が必要になったのです。中でも足利市の文化財に指定されている山門の金剛力士立像、いわゆる仁王像は、高さおよそ3mで移動が難しい。そこで頭の部分のみ避難させ、胴体はビニールにくるまれて山門の中にとり残されていました。

文化財を避難させたまでは良かったのですが、その先に大規模な修復が必要という事態に陥ってしまいました。

特に仁王像は山門から出すことすら難しかったのですが、この難しい修復作業に挑んだのが鹿沼市に工房を構えるこの3人でした。井村香澄さん、森埼礼子さん中愛さんです。3人は日光山輪王寺の三仏堂の三本尊の修理現場で出会い、2017年4月に仏像修理工房「三乗堂」を設立しました。

設立からこれまで、様々な仏像修理の依頼に応えてきた三乗堂。山林火災で頭のない状態になってしまった仁王像をそのままにするわけにはいきません。

火災から1年後の2022年3月。仁王像は山門から運び出されました。

工房に入ると3人はその損傷具合に驚いたといいます。

仁王像を一度解体して足りない部分を作り組み直すなど、気の遠くなるような作業が続きます。三乗堂ではSNSで様子を発信しながら仁王像の修理を続けました。

こうして仁王像が工房に入ってから3年9カ月。作業が終了し、いよいよ山門へと戻る日がやってきました。

作業が行われたのは12月9日でした。

仁王像がクレーンで持ち上げられると、帰りを待ちわびたかのように山門付近に強い風が吹きました。

いよいよ山門に入ります。一度縦に持ち上げられ足から山門の中へ下ろしていきます。力強く大きな腕、そして頭が取り付けられます。

待ちに待った仁王像の帰還です。

仁王像のもう一体はこの2日後に山門に入り、三乗堂のSNSでもその様子が公開されました。このあと現地で調整作業が行われ、2月から3月に完成予定だということです。

実は山林火災で被災した文化財は仁王像で終わりではなく、これからも修理のために何千万単位の出費がかさむといいます。最勝寺ではクラウドファンディングを行ってその修理費に充てたいということです。