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【昭和100年特集】今年創業100周年 那須塩原市の製紙会社「那須製紙」

シリーズでお伝えしている昭和100年の特集です。今年は昭和から100年という節目の年です。そこで、今年で創業から「100周年」を迎える那須塩原市にある製紙会社に、これまでの100年とこれからの展望について話を聞きました。

民間の調査会社の帝国データバンクによりますと、栃木県内に今年創業100年を迎える企業は29社あります。

そのうちの一社、那須塩原市一区町にある製紙会社「那須製紙」です。従業員はおよそ30人。主に東京や大阪、それに愛知県の企業と取引があり、ふすま紙や壁紙の原紙の製造・販売をメインに行っています。1日あたりの製造量は10トンから15トン、ふすま紙にするとおよそ8万枚の規模になるといいます。

「那須製紙」は、現在3代目の経営者・城田和郎さんの祖父である正男さんが、今から100年前の1924年に創業しました。

(城田和郎社長)
「「もっとい」という髪を結う時に使われる紙がある。それを農業の傍ら農閑期に紙づくりをしていて、それが事業に発展したと聞いています」

手漉き和紙から始まった那須製紙のつくる紙は、昭和32年・1959年に機械製造へと移り、現在工場は24時間稼働。製品は表面と裏面の2層構造になっていて、原料のおよそ8割が古紙なのが特徴です。古紙の再生はふすま紙の製造に適していることに加え、環境にやさしい一方、異物が含まれていることが多く、絵がのる表面に異物やシミが表れてしまう問題にぶつかりました。

「この『異物』との闘いになったのが、弊社の歴史の中では一番苦戦したところかと思います」

そこで、那須製紙が踏み切ったのは「設備投資」。古紙と水などを混ぜて繊維に分解したあと、洗浄する時に回転させて遠心力で汚れを落とす機械など、大手に引けを取らない設備を導入するという、会社の規模としては驚くような大規模投資を行いました。また、原料となる古紙を厳選して仕入れることで、環境にやさしく品質も良い製品ができるようになったといいます。

城田さんによりますと、今ふすま紙を作っている会社のうち「製紙会社」として残っているのは、那須製紙のみだといいます。住宅から和室が減るなど「ふすまのマーケットは厳しい環境」とのことですが、製造する過程で出てきた問題に対処してきたことで、最後の1社に残れたのではないかと分析しました。

また、100年企業になりえた要因として「那須野が原という土地」を挙げました。古紙をリサイクルするには大量の水を使うことから、「自然豊かな那須野が原の恩恵を最大限に得られる土地の影響が大きかった」と話します。一方で、高度経済成長期に生産量を増やして、排水の処理が追い付かない状況になったこともあったといいます。そうした問題も改善してきたことで、地域の住民から理解を得ることができたことも要因だと強調しました。

そして今、環境へ配慮した「これから」を見つめた挑戦を続けています。排水処理のほか、生産の過程で出た産廃物を乾かし、家畜の敷きわらとして再利用するなど、自主的に地球温暖化対策への取り組みを行っていて、県からは「エコキーパー事業所」として認定を受けています。また、使われなくなった紙幣のくずをリサイクルし、紙幣の耐水性や強度を利用した封筒をつくり、東京近郊の銀行で利用されています。

現在の那須製紙の主力は、企業の原点でもあるふすま紙原紙のほか、壁紙原紙。これらで生産のおよそ9割を占めていますが、展示会などで使われるブースを仕切るイベントディスプレイ用の特殊紙の製造などにも手を広げていて、城田さんはふすま紙の製造を守っていくとともに「シートになるものであればなんでも挑戦する」と意気込んでいます。

「ふすま紙が重要な柱であることは今後も変わらないし、ふすまや和室の文化を絶やしてはいけないと思っている。その中で持ち味をいかした別展開、環境にやさしいものづくりという別分野で訴求していきたい。人との出会いを通じて求めていくのが使命だと思っています」
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